春節もバンクーバーオリンピックもあっという間に過ぎてしまいました。女子パシュートの何とも惜しかったことよ!上の写真は、おなじみ、春節に香港の家庭やお店などに飾られる「逆さ福」。
文字を逆さまにして玄関ドアなどに貼る、「倒福」という風習です。
「倒」と「到」は同じ発音。福を倒して、「倒れる」=「到る」ということで、「福がやってくる」。
私は小学生の頃、戦車のプラモデルを作るのが好きでした。でも今はもっぱら他人の作ったのを眺めるだけ。街中を歩いていて模型屋さんを見つけたら、ふらっと入ってモデラーの作った展示品を眺めるギャラリーに徹しています。
で、ちょっと前、こんな戦車のプラモデルの完成見本が模型屋さんのショウウインドウに飾られていたのを発見。
こういうのです。(そのときに写真を撮らなかったので代わりに似たものをネットで探しました。<赤丸は学芸員K> 引用元はコチラ)
これは中国人民解放軍の戦車ではありません。第二次世界大戦時代の旧ドイツ軍の超有名な戦車、「タイガーⅠ型」。
どうやらプラモデルのキットの中に、「福」のデカールが入っていてそれを貼っているらしい。私の子どもの頃のタイガーⅠ型のキットにはこんなもの入ってなかった。
なんでキットにこんな漢字のデカールが入っているのか。
検索してみたら、実在のタイガーⅠ型戦車のボディに「福」の文字を書いた(貼った)ものがあったことがわかりました。
写真がありました。こちらがその実物のタイガーⅠ型の写真。時代的にはもう70年も前ということになります。

ダス・ライヒ師団という有名な部隊に所属していたタイガーⅠ型だということです。こちらはそのダス・ライヒ師団 S33号車をきちんと明示したラジコンモデルのパッケージ。
ところで、特に中国や香港の風習に関心のない日本人ならば、タイガーⅠ型のこの逆さまの福の字を見て、普通、こう思うと思います。
「うわ、漢字だ。でも、ありゃりゃ、『福』の文字が逆さまじゃないか。福の文字は縁起がイイと伝え聞いて戦車に貼って(書いて)みたものの、ドイツ人は漢字を知らないから逆さまになってしまったんだな」
そこで、「タイガー 福」「タイガー 逆さ福」「タイガー 倒福」などのキーワードでGoogle検索してみました。
戦車ファンや模型マニアのサイトやブログで
「なぜ字が逆さなんだろう」
「ドイツ人は漢字なんか知らないからだろう」
と話題にしていたり、
そういうギモンに対して、由来を知っている人が
「それは実は『倒福』という風習が中国にあって......」
と回答している掲示板やブログが検索でヒットするかと思ったら、さにあらず。
すでに、この「倒福」のタイガーⅠ型戦車のことは、戦車マニアの中ではつとに有名らしく、「倒福」の由来もきちんと皆さんご存じのようなのです。
この戦車、「ハッピータイガー」なんていう通称もあるらしく、インスパイアされた同名の漫画まであるということです。
でもひとつだけ、Yahoo知恵袋で質問がありました。コチラ
プラモデルを作るとき、「倒福」の習慣を知っている中国人ならともかく、日本人はなまじ漢字を知っているだけに「福」の文字をひっくり返さないで「正しく」プラモデルに貼ってしまう人もいるんじゃないか。
しかし、組み立て説明書に「逆さまに貼れ」とハッキリ説明されているのか、ネットで披露されているモデラーの皆さんが作ったタイガーⅠ型のプラモデル完成品は、どれもみなきちんと逆さまに貼られています。
組み立て説明書にその由来が解説されていて戦車モデラーの間で「倒福」のことが浸透しているのかもしれません。
こちらのブログでその組み立て説明書のデカールを貼る図が載っています。
http://pseisakujo.exblog.jp/tags/%E5%80%92%E7%A6%8F/
また、こういう本が海外で出ています。きっちり、「福」の文字が正逆比較図版付きで解説されています。
http://brummbar.exblog.jp/11800152
プラモデルの世界トップメーカー、タミヤのサイトには、この「逆さ福タイガー」の製品が載っています。コチラ
こちらではモデラーの方が、ドイツ軍戦車に「福」の文字が付いていて驚いたということや、模型製作解説が載っています。
http://2mc.on.coocan.jp/gallery/22nd/023/
こちらの掲示板にはドイツ軍の戦車に「倒福」のマークが付いたいきさつが、「推測として」回答されています。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1233748857
このタイガーⅠ型戦車は、倒福とは関係なしに、もともと戦車のプラモデルのマニアの間では、もう不動のダントツ一番人気の戦車です。模型雑誌では、このタイガーⅠ型のプラモデルの作り方や塗装の仕方の特集が何度も組まれたり、1冊まるごとのムック本もたくさんあるほどの人気です。
ちなみに、Googleで「倒福」で検索すると、いきなり「他のキーワード」として「倒福 タイガー」と表示されます。よっぽどタイガー戦車のファンの中では「倒福」は有名な話なのでしょう。













嘩~! コレってすごいですねぇ。模型関係者の間では夙に周知というのも、また驚きです。しかも考えてみると当時中華民國は敵國じゃないですか。
ふざけ半分に香港Googleで「倒福|虎」と投げてみるとやはりトップに。
http://www.cuhkacs.org/~henryporter/blog/read.php/97.htm
ちなみに、今話題の谷姐(goojje)では断片情報のみでした(^^)
阿郎さん
私も最初見たときはこの倒福タイガー、びっくりしました。
リンク先、「ハッピータイガー」の漫画、
初めて見ました。
なぜか不思議なことに、マニアの間では有名なのに
Google日本での検索では表紙だけで中身がヒットしなかったので。
谷姐は、個人がやっているそうですね。
物まね中国、というイメージが先行しているので
朝日新聞でも取り上げていましたが、
でも、こういうの物まねサイトは特に中国だけがやっているわけではないですよね。
パロディととらえるべきでしょうか。
個人的な意見として、通常であれば一般のドイツ人に「倒福」が理解できるはずもないでしょうから、知識人や高級人たちのユーモアかアイロニーとしての意味合いなら考えられなくはありません。
が、19世紀後半からのドイツの中国進出や、当時の軍組織との関連性からの方が少しは具体性があるかも.......
http://bbs.tiexue.net/post_3944280_1.html
に何やら書いてありますが、中国語を解する能力がないもので。
mougaandouさん
たしかに私たちは、「「倒れる」=「到る」、だからひっくり返して……」と
理屈と感覚で理解できますが、
漢字を使わない国の人には難しいでしょうね。
リンク先拝見しました。
発見していただきありがとうございます。
たしかにここに何かかいてありそうですね。
でも、私も中文はさっぱりだし、
しかも簡体字!
でも糸口がつかめました。
ありがとうございます。
mougaandouさんが紹介してくださった内容が繁体字で書かれていないかと捜してみたところ、以下サイトがヒットしました。
http://home.gamer.com.tw/blogDetail.php?owner=tienting&sn=8920
濃いサイトですね~ぇ(笑)。しかも肝心の文字が非常に判別し難いときています。
読んでみると、「倒福」が遙かドイツで知られるようになった遠因に蒋介石の次男・緯國の軍事留学があったとした上で、「福虎」の由来の一番有力な説として、ノルマンディで捕虜となったSS上尉のヨゼフ・スカー(?)の日記の一文を紹介しています。
「~S33號の操縦長のディートリッヒ・ヴェルン(?)はふざけた野郎だ。奴は以前、中国人女性(恋人だったか妻だったか)の名を砲身に刻みたいなどと上官に申し出て却下されたことがある。然らば今度はと、武運に御利益があると称して車体3箇所に「倒福」を貼りがった。もちろん、御利益などあろうはずはなく、その後ソ連軍にこっぴどくやられ~」(例によってスーパーナンチャッテ半分テキトー赤っ恥意訳ですので呉々も妄信せぬよう。人名の表記も怪しい)。
件のコミックはこの逸話に基づいて描かれているようですね。戦記物は古今東西問わず全く関心外なのですが、今回はお陰でいろいろ知ることできました(これだから「つめホーダイ」は面白い!)。ありがとうございます。
まあ、これは偶然とはいえ
すごいものに出会えましたね。
>そこで、「タイガー 福」「タイガー 逆さ福」「タイガー 倒福」などのキーワードでGoogle検索してみました。
で、そこからいろいろと調べられたのがすごいです。
何もかも
初めて知ることばかり
その筋の方々には有名なものだったんですね。
なんだかわかんないけど漢字がかっこいいからと
へんか漢字を刺青しちゃったり
実はすごい意味の英語のTシャツを着ちゃっているのとは
意味が違うんですね。
お勉強になりました。
阿郎さん
ナンチャッテ意訳だとしても参考になりますよ。
ありがとうございます。
リンク先、記事で載せた同じ写真もありますね。
ネットにはやっぱり濃いサイトがありますねえ。
ところで、YouTubeで検索したら、
戦車博物館で、2007年に現物のタイガーⅠ型を動かしたという
動画がありました。
http://www.youtube.com/watch?v=wY_5c0mBXok
ご興味はないかもしれませんが。
でも、こんな古い戦車でもまだ動くのかと驚きです。
ころたさん
いや、調べるのは単に検索に入力するだけですから(笑)。
昔なら図書館に行ったり本屋さんに行ったりするところでしょうけどね。
>実はすごい意味の英語のTシャツを着ちゃっている
私たちなどが普段英語のプリントされたTシャツを着ていて、
英語ネイティブの人から見たら「なんだかな~」というのは
けっこうあるんでしょうね。
今回のタイガーの逆さ福は、
ドイツの兵士にとっては絵柄というかマークのようなものでしょうね。
そういえば、以前、ニューヨークの自転車屋さんで
自転車を借りるとき、クレジットカードなどで使っている
サインを漢字でささっと書いたら、
自転車屋さんが感心したように珍しそうにそのサインを眺めて
「美しい!」と言ってました。
リップサービスなんだろうけど(でも顔が心底感心しているようではありました)、
漢字というのは神秘的な感じというか、ありていに言えば
かなり特殊な文字なんだと思います。
何かの本だったか雑誌の体験談で読んだのですが、
ある日本人留学生がドイツ(だったかな)で、
名前か何かを漢字で書いていたら、
その漢字を見た現地人の友人が笑ったそうです。
「それは字じゃない」。
漢字は世界でもっとも「変わった字」ではありますね。