香港映画祭レポートというか雑感 【その1】
「香港のスピルバーグ」

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 時系列でもなんでもなく、気がついたことを書きます。一発目なのに映画祭の本筋には直接関係ないことですが。

 初日のオープニングセレモニーのことです。

 司会者の方が舞台にひとりひとり登場するゲストを紹介するとき、ツイ・ハーク氏を 「香港のスピルバーグとも言われている、ツイ・ハークさんです!」 と紹介したのには、私はかなり違和感を覚えました。

 当のスピルバーグが現在、かつてのステイタスやポジションにいないこともありますが、それはともかく、だいたい人を紹介するときに、こういう形容でやるのは、どんなものかと思うのです。ツイ・ハーク氏自身は、屁とも思ってないかもしれないけど。

 こういう形容での紹介には、言うまでもないですが、暗黙の共通認識があります。「香港のスピルバーグ」などというときの、「香港の××」「日本の××」の「××」の部分に入るのは、紹介する人物と比較して、「明確にかけ離れて高いところに位置している人物」であることが前提となりますよね。

 今回の場合、「香港のスピルバーグ」と紹介するからには、紹介する側の意識として、「ハリウッドの世界的大御所のスピルバーグ」>「香港ローカルで大御所のツイ・ハーク」、という図式があったと思います。

 その意識は別に問題ないし、OKなのですが、事実として「スピルバーグ」がツイ・ハークの位置から完全にかけ離れて高いところに位置していなければ、「香港のスピルバーグ」という紹介の仕方は、ツイ・ハークに対してとんでもなく失礼になってしまいます。

 たしかに、かつて、ツイ・ハークは 「香港のスピルバーグ」 という言い方で形容されていました。本人もまだまだ新進気鋭のころだったでしょうし、当時のスピルバーグは絶大な人気と圧倒的な商業映画を創る力を持っていたから、比較されるツイ・ハーク本人もそれを良しとしていたかもしれません。

 しかし、すでに30年近いキャリアを持つベテラン監督・製作者になっているツイ・ハークをつかまえて「香港のスピルバーグ」って、アンタそりゃないだろうって思います。そもそも、「スピルバーグ」という名前を使って「○○のスピルバーグ」というのは死語に近いのでは?(そういえば、かつて日本の大森一樹監督が「日本のスピルバーグ」と言われていました…。)

 こういう紹介をするときは、司会者(が話す原稿を書いた人)には、ゲストを称える意図があるのでしょうが、しかし、紹介された当人にはいい迷惑なのではないか。たとえば市井の私が取るに足らない自主映画を撮り、その出来がたまたま素人の世界で良い評価を受け、舞台挨拶で 「自主映画界のスピルバーグ、学芸員Kさんです!」と紹介されるのとは訳が違うのですから。

 かつて、これも香港映画でしたが東京ファンタスティック映画祭で、舞台挨拶のため来日したゲストのロレッタ・リーを紹介するとき、司会者が「香港の薬師丸ひろ子ともいわれる、ロレッタ・リーさんです!」と言ってました。ロレッタ・リーはこう紹介されてどう思ったのか。これなんかホスト国である日本の司会者が 「わが国日本の芸能人」 の方を高みに置くという図式なので、余計に始末が悪い。だってもし、日本の女優○○さんがアメリカの映画祭にゲストで呼ばれて、舞台挨拶でアメリカ人の司会者に「日本のキャメロン・ディアス、○○さんです!」とやられたら、あまりイイ気がしないと思うもん。

 以前、クイズ番組で司会の関口宏が、京大の学生チームに対して、「西の東大、京大ですね!」という、アチャーなことを言ったら、京大生が「いえ、京大は、西の東大ではなく、京大です」と、言ってました。つまり、紹介された側は時と場合と形容の仕方(たとえで持ち出す人物・事物のレベル)によっては、そういう反発を感じるのではないでしょうか。

 私はスピルバーグの映画が好きですし、『未知との遭遇』の歴代編集バージョンDVDセットも欲しいし、『E.T.』は泣きました。でもいまさらツイ・ハークの紹介で 「香港のスピルバーグ」 はないです。

 しかし、ネットで検索してみたら、私がよく行くウィキペディアはじめいろんなサイトで、ツイ・ハークのことを「香港のスピルバーグと呼ばれている」と今でも現在形で紹介しているものが多いんですよね。

 ウーン。私だけなんでしょうか。違和感を持っているのは……。

 私は、アメリカ映画に対抗してことさらに香港映画を持ち上げるつもりはないのです。でも、国際映画祭という場で、海外からのゲストを迎えてホストを務める司会者のアナウンスの原稿内容は、私はやはりもうちょっと表現に慎重なほうがいいと思います。

 映画祭の本筋とは関係ありませんが、少し突っ込まさせていただきました。

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コメント(4)

私も常々思っていました。
それってもう10年以上前の感覚ですよね。
だいたい今の若い人達にそんなこと言ってもわからないのではないでしょうか。
それに宣伝用のキャッチコピーなんか読むと、香港映画のことを全然知らない人が書いているのではと思うことがありますよね。
最近むかついたのは「プロジェクトBB」公開前、古天樂の紹介で『香港の期待の新人!ルイス・クー』・・・って思わず、「はぁっ!?これ書いた人古仔の芸歴も知らないの? ばかもの!!!」とつっこんでしまいましたよ。
もう今の日本の映画配給会社の香港映画に対する認識ってこんなもんなんですね悲しいことに。
だからわからなければ余計な形容詞をつけないでいいから名前だけはっきりと紹介してあげて!と言いたいです。

長々と大変失礼いたしました。
学芸員Kさんの記事にすっかり同調し、嬉しくなった次第です。

私も学芸員Kさんと同じように感じますね。
何かの媒体で紹介する場合はまだ仕方ないにしても、
少なくとも本人を目の前にして形容するのは止める
べきだと思いますよ。

悠さん
同調してくださって感謝です。私が屁理屈こねまわしているだけかなとも思ってたので。

今回、ルイス・クー氏を紹介するとき、司会の女性が「ルイク……ルイス…ルイス・クーさんです!」と間違いかけたのですが、これなんかは、まだご愛嬌だと思います。会場は「あ、司会者は知らないな」と空気が引いたと思いますが。もちろん本番前に万全に準備して間違えないのがプロだと思いますが、これはトチったということで、許容範囲かな。司会者というものは別にその道のファンではないでしょうし。たとえば今やっているモーターショーで出品車の解説をしているコンパニオンも当然ですがたいていはカーマニアではないだろうし。

でも、司会者がアナウンスする内容の原稿を書く人は、やはり、マニアではなくとも、ある程度の知識がないとダメかな。付け焼刃だとボロが出ますよね。

Katoさん
私は以前から「○○の××と呼ばれている」という形容の仕方に、なんか危ういというか、そんな表現っていいのかな~、微妙だな~、と思っていたのでした。
それが今回のツイ・ハーク氏の紹介で「あ、これは、マズイんじゃないの?」と思ったしだいです。

Katoさんの言われるように、媒体での紹介ならば、説明としててっとり早くわかりやすい場合もあるので、まだアリかもしれないけど、本人を目の前にしては、やっぱりやめるべきですよね。

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     この記事について

このページは、学芸員Kが2007年10月25日 11:32に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「香港映画祭に向かう途中渋谷の雑踏のなかで散歩中(?)のツイ・ハーク氏に遭遇」です。

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