香港映画祭レポートというか雑感 【その6】
『父子』(10月24日上映)

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    【会場ロビーにあったポスター】

 この映画は去年の東京国際映画祭で上映され、最優秀アジア映画賞を受賞しています。今回はそれを記念しての上映。私は去年見逃したので今回観ました。この映画は香港電影金像奨作品賞ほか、監督・脚本・助演男優・新人賞の計5部門も受賞しています。

 ストーリーは、すみませんがココを。

 【以下、ネタバレあります】
 数々の賞を獲得した作品ですが、その出来はともかく、私は観ていて辛かった……。いや、観ている途中は、まだ未知の結末に希望を持てるからいいのですが、その望みがついえて最終的には結局子どもが救われず、この作品をすべて観たあとは、気分が重くなりました。

 ひとつだけ救いだったのは、あれだけのすさんだ幼少期を過ごした子が、十数年後のラストでは善良で良識ある青年に育っていたことでした。

 結婚していない父と母とひとり息子、BOY。やがて母は苦しみながらも結局BOYのもとを去り、新しい男へ走り、赤ちゃんを産み幸せに暮らしている。父はBOYに泣きながら「俺にはお前だけしかいない」という。そんな父は生活のためBOYに泥棒をさせ、発覚したら助けると約束していたのに、いざそうなるとBOYを置いて逃げてしまう。BOYは養護院に預けられる。

 そして、映画では最後の数分間のエピローグ。十数年後。BOYは青年となり、父をたずねていく。うわさでは、父は新しい家庭を築き、幸せに暮らしているという。妻であろう女性と歩くその父を、誰知ることもなく青年は静かに遠くから眺める。ここで物語は終わります。

 結局ストーリーを書いてしまいましたが(汗)、要するにBOYはそんな状況で育った。それがどのようにしてあのような立派な青年になったのか。映画の最後の最後に見せる、立派に育った青年のりりしい顔と、自分の子どものころの罪をつぐなう彼のささやかな行動。私はそこにのみ、この物語の絶望的な結末に希望の光を見ました。

 父と断絶して青年になるまでの、彼の精神の成長の物語がどんなものだったのか、この映画はその部分を飛ばして我々には語りません。しかし語らないことによって、その間の彼の人間としての成長を、各々の観客の想像に任せ、それによって観る者各々に静かな感動を呼び起こさせる、ということをこの作品は意図したのかな、とも思いました。

 疑問に思ったのは、母のチャーリー・ヤンがアーロン・クォックから逃げて走った先の新しい男を、メガネをして身なりを整えた同じアーロン・クォックが二役で演じていたこと。新しい男を同じ役者で配役するのは、どんな意味があるのでしょうか。いくつか凡庸な推測をしてはみましたが、でも、別の人間でOKだったような気もするのです。バカな私は一瞬、身なりの立派なアーロンを見て、夫が真面目だった若いころの、妻の回想シーンなのかなと思ってしまいました(笑)。二役として配役した監督の意図を知りたいです。昨年の映画祭ではこの作品のティーチインはあったのでしょうか。あったならそこでは監督に対してどんな質問や意見がありどんな回答があったのか、おおいに知りたいです。

 BOYが育ったのちの青年役の俳優が、アーロンの息子という設定にはぴったりな風貌なので、すごく良かったです。あの俳優は誰なんでしょうか? 私はほんとに最近の中華系俳優はノーマークの人が多いのですが、有名な俳優なのかな?

 うーん。それにしても……。この映画は重かった。香港特別行政区設立10周年記念と銘打った香港映画祭に、おバカな昔みたいなウォン・ジン映画もないでしょうけど、でも、今回の4本のうち1本は大爆笑喜劇が欲しかったなあ。

 追記:この記事を書いたあと、写真のポスターの父の背中と子ども風車を見たらたまらなく切なくなってきました。この映画は、再度じっくり観ると、監督の意図がより感じ取れるのかも……しれません。

 追記:書きそびれましたが、この映画、アーロンやチャーリーの熱演も良いですが、やはり最大の功労者はBOY役で主演した9歳のン・キントー君です。香港電影金像奨の助演男優賞と新人賞をダブル受賞しています。

●『父子』の公式サイト:不明です。
香港ヤフーで「父子」で検索してヒットした映画解説ページMOV.3.COMに行ってみたら、この映画の英語原題をドメインにした「www.afterthisourexile.com」というリンクが張ってあったので行ってみたら、「セキュリティ警告」が出たので「はい」をクリックしたらいきなりアドレス欄のURLが変わり、怪しいカジノのページに飛んでしまいました。皆様お気をつけください。(MOV.3.COM自体は普通の映画紹介サイトです)

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このページは、学芸員Kが2007年10月27日 13:09に書いた記事です。

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